クリーム色の背景に、小さな「POGOシリーズ 第2回」のラベルとタイトル「税金を払わないPOGOに「3日で払え、さもないと撃つ」。そのドゥテルテが3か月後「POGOはクリーンだ」と言った」。右側には、手錠をかけられた手と南京錠(誘拐)、札束入りの封筒(賄賂)、納税の領収書と金貨(税金)の線画

税金を払わないPOGOに「3日で払え、さもないと撃つ」。そのドゥテルテが3か月後「POGOはクリーンだ」と言った

POGO(フィリピンのオフショア賭博事業者)で働く中国人が増えたあと、フィリピンでは中国人どうしの誘拐が増え、入国をめぐる賄賂の疑いが出て、税収は思ったほど入りませんでした。

ドゥテルテ大統領は税金のことで怒り、犯罪に関わる人には「殺す」と言いました。その数か月後には「POGOはクリーンだ」と言っています。禁止を決めたのは、次のマルコス大統領でした。

誘拐は1年で71%増えた

警察の誘拐対策部門(PNP-AKG)の集計では、誘拐された中国人は2018年が34人、2019年は11月までで58人でした。71%の増加です(Rappler)。AKGは誘拐を、身代金目的、カジノの借金に絡むもの、POGO関連の3つに分けて数えています。Rapplerの説明ではPOGO関連とは、辞めようとした従業員をPOGOの会社が連れ戻す新しい手口です。

2020年3月の上院公聴会で、警察の副長官が数字を並べました。カジノ関連の誘拐は2017年が17件、2018年が16件、2019年が38件です。2017〜2020年の合計は73件で、被害者80人は全員が中国人でした(Inquirer、ABS-CBN)。POGO関連に絞ると9件、被害者16人、容疑者38人です。

売春組織の数字もあります。2019年に中国人が運営する売春組織から救出された女性は199人で、173人が中国人でした。逮捕された60人のうち59人も中国人です。副長官は、犯罪の増加は中国人の入国者数に直接左右されると話しました(ABS-CBN)。一方、マニラの中国大使館は個別の事件にすぎず全体像を表すものではないと反論しています。

中国人の誘拐被害者の数と、誘拐の件数

入国には1人1万ペソ

同じ2020年2月、ホンティベロス議員が上院で入国をめぐる賄賂の疑いを示しました。情報提供者の話では、観光ビザで来る中国人は1人₱10,000(2026年10月29日のレートで約2万5,000円)を払います。そのうち₱2,000が空港の入国管理職員の間で分けられ、₱8,000が中国側と国内の運営者、犯罪組織に回ります。議員は現金を紙で巻いて渡すことから、この手口を「pastillas(パスティーリャス)」と呼びました(Rappler)。

入国管理局の幹部は、聞いたのは初めてだと答え、調査すると発表しました。ドゥテルテ大統領は2月に、この件で入管職員19人を職務から外しています(Philstar)。金額と仕組みは情報提供者の話に基づく指摘で、確定したという報道は見つけていません。

税金は、思ったほど入らなかった

2019年12月、BIR(内国歳入庁)の幹部は下院で、海外に拠点を置くPOGO50社のうち、5%のフランチャイズ税を払った会社はないと証言しました。払っていたのは国内法人の10社だけです(Philstar)。

2020年2月には、別のBIR幹部が上院で、2019年に免許を持つPOGOが払うはずだった税を、概算で₱500億(約1,238億円)と述べました。内訳は源泉税が約₱300億、フランチャイズ税が₱170億〜180億です。BIRが実際に集めたのは約₱50億でした(Inquirer)。

ただし財務省は翌月、この₱500億は「かなりおおまかな推計」で、過大だった可能性があると認めました(BusinessMirror)。財務省の集計では、2019年にPOGOと関連業者から集めた税は₱64.2億(約159億円)で、前年の₱23.8億より169%増えています(財務省)。2022年は₱88.8億(約220億円)でした(Inquirer)。

POGOからの税収と、BIR幹部の概算

上院では、少数党の院内総務がPAGCORに詰め寄りました。政府が受け取る手数料は₱80億なのに、それでPOGOを残すのか、という追及です(ABS-CBN)。

ドゥテルテ大統領は怒り、そして「クリーンだ」と言った

2019年8月30日、ドゥテルテ大統領は北京のビジネスフォーラムで、中国人がカジノの借金で高利貸しに誘拐され、ときには殺されると述べました。そして犯罪に関わる人に向けて、麻薬やコカインでこの国を壊すなら殺す、以上だ、と話しています。法を守る実業家は守る、とも言っています(GMA)。

怒りがはっきり出たのは税金でした。11月29日のテレビのインタビューで、税を払わないPOGOに、少なくとも3日の猶予をやる、さもなければ爆弾で撃つ、と言いました。フィリピン人をだますなら殴る、とも続けています。それから10日後の下院公聴会で、BIRは海外拠点のPOGO50社のうち払った会社はない、と証言しました(Philstar)。

その3か月あまり後、2020年3月10日の市町村長の会合で、大統領は宣誓にかけて保証すると前置きし、POGOはクリーンだと話しました。POGOは月に₱20億を国に入れる、PAGCORは年に₱170億だ、とも言っています(Philstar)。月₱20億は年にすると₱240億です。財務省が2019年に集めたと発表した税は₱64.2億なので、同じものを数えているとは限りませんが、開きがあります。

マルコス大統領は、禁止を宣言した

2024年7月22日、マルコス大統領は施政方針演説で、本日をもってすべてのPOGOを禁止すると述べました。正当な事業者を装い、賭博からかけ離れた違法な分野に手を広げた、として、金融詐欺、資金洗浄、売春、人身取引、誘拐、残虐な拷問、殺人を挙げています。PAGCORには年末までの停止を指示しました(Philstar)。この記事は、財務省がPOGOを放置すると国は年に約₱995億(約2,464億円)を失うと試算していたことも伝えています。

ドゥテルテ大統領は税金に怒り、犯罪に関わる人には「殺す」と言い、2020年3月には「POGOはクリーンだ」と宣言しました。その産業を、4年あまり後にマルコス大統領が「すべて禁止する」と宣言したのです。同じ産業を2人の大統領が正反対の言葉で語り、その間には80人の誘拐被害者と、入国の賄賂の疑いと、食い違う税収の数字が残っています。私にはこの食い違いが、POGOとは何だったのかをいちばんよく表しているように思えます。