クリーム色の背景に、小さな「POGOシリーズ 第3回」のラベルとタイトル「疑わしい取引は約347億円、救出は2,714人。カジノの名で動いた詐欺拠点の金は桁違いだった」。右側には、オフィスビル群と、円記号の帯がついた札束の山の線画

疑わしい取引は約347億円、救出は2,714人。カジノの名で動いた詐欺拠点の金は桁違いだった

POGO(フィリピンのオフショア賭博事業者)は、免許を持つ賭博事業者のはずでした。ところが摘発の現場では、詐欺と人身取引の拠点が次々に見つかっています。PAGCOR(フィリピン娯楽賭博公社)の会長は2024年6月、免許のないPOGOが250〜300あり、免許を持つ46の約6倍だと話しました(Inquirer)。

POGOと詐欺の周りで動いた金について、総額を示す公的な数字は、見つかりませんでした。あるのは断片だけです。

失業率が17.6%になった年

2020年4月、フィリピンの失業率は17.6%(確定値。速報は17.7%)でした。失業者は約720万人(速報では730万人)です。1月は5.3%、前年4月は5.1%でした(PSA)。バンバン(タルラック州)やポラック(パンパンガ州)がある中部ルソンは27.3%でした(GMA)。

コロナで職を失ったフィリピン人が詐欺拠点に入った、と直接示す調査は見つかりませんでした。並べて言えるのは、後の摘発で拠点の中にフィリピン人が大勢いたことです。ポラックの事件の検察官は人身取引について、国の災害であるパンデミックに乗じた犯行だと説明しました(Philstar)。

救出された人の内訳

2023年6月、ラスピニャスの「Xinchuang Network Technology」(旧名Hong Tai)を警察が捜索しました。令状は人身取引防止法違反です。救出は2,714人で、1,528人がフィリピン人、600人が中国人、ほかにベトナム人183人、インドネシア人137人、マレーシア人134人、タイ人81人などでした(Inquirer)。

2024年3月13日、バンバンの「Zun Yuan Technology」にPAOCC(大統領府の組織犯罪対策委員会)らが入りました。きっかけは2月28日にベトナム人の従業員が逃げ出して通報したことと、マレーシア大使館の情報です。救出は868人で、371人がフィリピン人、497人が外国人でした。36棟の建物があり、暗号資産の投資詐欺とロマンス詐欺の証拠も見つかっています(Inquirer)。PAGCORはこの会社に暫定の免許を出していましたが、摘発の直後に取り消したと説明しました(GMA)。

2024年6月5日にはポラックの「Lucky South 99」で186人を救出しました。外国人157人とフィリピン人29人で、46棟の建物とゴルフ場がある5.8ヘクタールの敷地です。この会社は2022年9月にも摘発されていて、PAGCORのリストには2023年8月時点で、免許を持つ32社の1つとして載っていました。PAOCCは2024年の摘発のとき、PAGCORの許可はないと説明しています(Inquirer)。

摘発で救出された人の内訳

借金で売られた人

ポラックの事件で訴えた被害者は14人で、10人が外国人、4人がフィリピン人です。摘発のとき、拷問の跡がある中国人の従業員と、手錠でベッドにつながれた中国人の男性が見つかりました。検察官は一例として、₱30万〜₱40万(2026年10月29日のレートで約74万〜99万円)の借金を負った被害者が、完済するまで解放されなかった話を挙げています。完済が近づくと別のPOGOに転売される、ともいいます。麻雀で₱45万(約111万円)の借金を負った中国人の男性もいました。PAOCCの報道官はカジノで客を見つけて金を貸し、返せなくなると売る流れだと説明しています(Philstar)。

この摘発のもとになったのは、男性が殴られる動画でした。PAOCCの報道官はこの男性が亡くなったという報告を受けたと述べています。遺体は火葬されたという報告もあります(Inquirer)。

市長だった人

バンバンの市長だったアリス・グオ氏は2024年7月に国外へ出て、9月にインドネシアで拘束され、フィリピンに戻りました(Straits Times)。2025年11月20日、パシッグの地方裁判所はグオ氏とほか3人に加重人身取引で有罪を言い渡し、終身刑にあたるreclusion perpetuaと罰金₱200万を科しました(NBI)。

調査が進むと、中国のスパイではないかという疑いも広がりました(Inquirer)。これは疑いの段階の話で、判決の内容ではありません。

金の断片は、桁違いだった

並べられる数字を集めました。

AMLC(反マネーロンダリング評議会)は2020年3月、2017〜2019年のPOGO関連の取引が₱540億(約1,337億円)で、うち₱140億(約347億円)が「疑わしい取引」だと上院で報告しました。内訳は電子商取引法違反が₱49億、取引の根拠がないものが₱40億などで、詐欺は₱1.21億、麻薬は₱1.38億です(Inquirer)。疑わしい取引は犯罪と確定した額ではありません。

ゴードン上院議員は2019年9月からの5か月に、47人が香港とシンガポールから現金$4.47億(₱226.9億、約562億円)を持ち込んだと指摘しました。うち$2.1億は中国人です。議員自身は申告されて合法に入ってきた金だと述べています。資金洗浄の疑いとして示された数字で、確定した事実ではありません(Inquirer)。

バンバンについては、AMLCが2024年7月にグオ氏ら3人の銀行口座90、不動産、ヘリコプターなどの凍結命令を得ました(Philstar)。8月末にはグオ氏ら36人を、POGO施設の建設に使った約₱70億(約173億円)の資金洗浄で、87件の罪で訴えています。ガチャリアン上院議員は施設全体の建設費を最大₱60億と推計しました(Inquirer)。

シンガポールで約S$30億規模のマネーロンダリング事件の有罪判決を受けた2人は、2024年9月、バンバンの人身取引事件でフィリピンの訴状に名前が出ました。バンバンの施設の土地を持つ会社は、グオ氏とこの2人らが2019年につくっています(Straits Times)。

中国側の数字もあります。SCMPは2020年8月、中国人が違法なネット賭博に年に約1,450億ドルを使い、そのサイトの多くはフィリピンから配信されていると推計しました(SCMP)。この額はフィリピンに入った金ではありません。

出どころの違う、お金の断片

公式な総額はありません。AMLCの数字は取引で、議員の数字は現金の持ち込みで、SCMPの数字は中国側の賭け金の推計で、シンガポールの数字は別の事件のものです。性格が違うので、足し算はできません。前回見たPOGOの税収は、2019年で₱64.2億でした。それと並べると、断片の一つひとつがどれほど大きいかがわかります。海の向こうから流れ込んだ金は、桁違いの規模だったのではないか。数字の断片はそう想像させます。ただし確かめられる総額は、誰にもわかりません。